柔らかい色彩が特徴の植物染料を用いて、自然の風合いの紬を織り上げる志村ふくみさん。以前から名前と作品は知っていたものの、今回美の壺で特集されていたので気になってまとめてみました。この魅力的な作品を生み出す志村さんの作品やその背景がわかりましたらより味わい深く鑑賞できると思います。
志村ふくみさんのプロフィールは?
生い立ちと教育
1924年9月30日: 滋賀県近江八幡市に生まれる。
1942年: 文化学院を卒業。
染織家としてのキャリア
1957年: 第4回日本伝統工芸展に初出品で入選。
1986年: 紫綬褒章を受章。
1990年: 重要無形文化財「紬織」保持者(人間国宝)に認定。
1993年: 文化功労者に選出。
2014年: 京都賞思想・芸術部門受賞。
2015年: 文化勲章を受章。
随筆家としての活動
1983年: 著書『一色一生』で第10回大佛次郎賞を受賞。
1993年: 『語りかける花』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。
その他の活動
2013年: 娘の志村洋子さんとともに「Ars Shimura(アルスシムラ)」を設立し、後進の育成に力を入れる。
志村ふくみさんは、草木染めと紬織の技術を駆使し、自然の美しさを作品に取り入れることで、多くの人々に愛されています。
草木染めとは何ですか?
自然の植物や樹皮、花などから抽出した染料を使用します。
季節や採取場所によって色合いが異なるため、自然の美しさをそのまま作品に取り入れることができます。
紬織とは何ですか?
草木染めした糸を使って織り上げる技法です。
手織りで丁寧に織り上げるため、独特の風合いと温かみが感じられます。
志村さんの作品は、これらの技法を駆使して自然の色彩や質感を表現しており、多くの人々に愛されています。
志村ふくみさんが有名になったきっかけは?
草木染めと紬織の技術:
志村さんは、自然の植物から染料を抽出する草木染めの技術を駆使し、その美しい色彩を紬織に取り入れました。これにより、独特の風合いと自然の美しさを表現する作品を生み出しました。
受賞歴と認定:
彼女の作品は高く評価され、多くの賞を受賞しています。特に、1986年に紫綬褒章を受章し、1990年には重要無形文化財「紬織」保持者(人間国宝)に認定されました。これにより、彼女の技術と芸術性が広く認知されました。
著書と随筆:
志村さんは随筆家としても活躍しており、多くの著書を出版しています。彼女の著書『一色一生』は第10回大佛次郎賞を受賞し、多くの読者に感銘を与えました。
教育活動:
2013年には、娘の志村洋子さんとともに「Ars Shimura(アルスシムラ)」という芸術学校を設立し、後進の育成にも力を入れています。
これらの要素が組み合わさり、志村ふくみさんは日本国内外で高く評価される染織家となりました。
志村洋子さんのプロフィールは?
生い立ちと教育
東京都生まれ: 志村ふくみさんの娘として生まれる。
30代: 母・志村ふくみさんの影響を受け、染織の世界に入る。
染織家としてのキャリア
1989年: 宗教、芸術、教育など文化の全体像を織物を通して学ぶ場として「都機工房(つきこうぼう)」を創設。
2013年: 母・志村ふくみさんと息子・昌司さんとともに芸術学校「Ars Shimura(アルスシムラ)」を開校。
著書と随筆
著書: 『色という奇跡』、『たまゆらの道』(志村ふくみさんとの共著)、『志村洋子 染と織の意匠 オペラ』など。
作品の特徴
藍建て: 特に「藍建て」に強く心を引かれ、その技術を駆使して美しい染織作品を生み出しています。
自然の色彩: 自然の植物から抽出した染料を使用し、四季折々の色合いを作品に取り入れています。
志村洋子さんの作品は、自然の美しさと心象風景を巧みに織り交ぜたもので、多くの人々に感銘を与えています。
志村洋子さんは、特に「藍建て」に強く心を引かれ、その技術を駆使して美しい染織作品を生み出しています。彼女の作品は、自然の色彩と質感を巧みに取り入れたもので、多くの人々に愛されています。
藍建てとは何ですか?
藍建て(あいだて)とは、藍染めのために藍を染色可能な状態にする工程のことです。藍は通常、水に溶けないため、染色するためには還元して水に溶ける形に変える必要があります。この還元工程を「藍建て」と呼びます。
藍建てには主に2つの方法があります。
発酵建て:微生物の発酵を利用して藍を還元する方法。
化学建て:化学薬品を使って藍を還元する方法。
この工程を経て生成された液体は、布や糸を染めるために使用されます。染色後、空気中の酸素と反応して藍色が定着します。
お二人の作風は?
紬織(つむぎおり)という織物とは何ですか?
紬織(つむぎおり)は、主に紬糸を使って織られる絹織物の一種です。
糸の事
紬糸(つむぎいと)は、屑繭(くずまゆ)から作られた真綿を引き伸ばして紡ぎ出した糸です。
糸の太さが一定せず、節があるため、織り上がった生地は荒く、野趣に富んだ風合いがあります。
機織り(はたおり)
紬織は、平織りという基本的な織り方で織られます。
手織りで丁寧に織り上げるため、独特の風合いと温かみが感じられます。
できた布はどうやって使うの?
紬織の生地は丈夫で、普段着やおしゃれ着として広く使われます。
大島紬や結城紬などの高級品もあり、これらは特に人気があります。
全国にはいくつか紬織の産地があります。
大島紬(おおしまつむぎ): 鹿児島県の奄美大島で生産される絹織物。シワになりにくく、軽い肌触りが特徴です。
結城紬(ゆうきつむぎ): 茨城県結城市で生産される高級絹織物。ふんわりとした肌触りと温かみがあります。
紬織は、自然の美しさと手作りの温かみを感じられる伝統的な技法です。
志村ふくみさんの作品はどんな特徴があるの?
草木染め
自然の色彩: 草木染めは、植物や樹皮、花などから抽出した天然の染料を使用します。これにより、自然の美しさと奥行きを持つ色合いが生まれます。
季節感: 季節や採取場所によって色合いが異なるため、四季折々の自然の変化を作品に取り入れることができます。
紬織り
手織りの風合い: 紬糸を使って手織りで織り上げるため、独特の風合いと温かみがあります。糸の太さが一定でないため、ざっくりとした手作りの質感が楽しめます。
経年変化: 使用するにつれて絹の艶が増し、経年変化を楽しむことができます。
自然との対話
志村さんは、自然との対話を大切にし、草木染めを「草木が抱く色をいただく」と表現しています。自然に対する真摯な姿勢が作品に反映されています。
代表作
秋霞: 1958年に制作された作品で、藍染めを用いた深い藍色が特徴です。
月の出: 1985年に制作された作品で、藍、刈安、渋木を用いた青みがかった色合いが特徴です。
半蔀: 1985年に制作された作品で、茜、刈安、藍を用いた明るい色合いが特徴です123。
志村ふくみさんの作品は、自然の美しさと手作りの温かみを感じられるものが多く、多くの人々に愛されています。
志村洋子さんの作品はどんな特徴があるの
自然の色彩
植物染料: 志村洋子さんは、祖母・小野豊さんや母・志村ふくみさんから受け継いだ植物染料を使用しています。これにより、自然の美しさと奥行きを持つ色合いが生まれます。
四季折々の色: 季節や採取場所によって色合いが異なるため、四季折々の自然の変化を作品に取り入れることができます。
心象風景
心象の表現: 志村さんの作品は、彼女自身の心象風景を染め織ることを目指しています。自然の風景だけでなく、心の中の風景や架空の世界を表現することが特徴です。
鏡のような作品: 彼女の作品は、心象の「鏡」として、自身の生を染め織るという意味を持っています。
代表作
月明(1998年): 白樫、茜、桜を用いた作品。
聖グレゴリウス(2002年): 藍と玉葱を用いた作品。
蔵(2003年): 玉葱、蘇芳、金箔を用いた作品。
善妙の夢(2009年): 紫根、藍、刈安を用いた作品。
ベアトリーチェ(2010年): 蓬、紫根、臭木を用いた作品。
夢(2010年): 紫根、玉葱、団栗、臭木、金箔を用いた作品。
志村洋子さんの作品は、自然の色彩と心象風景を巧みに織り交ぜたもので、多くの人々に感銘を与えています。
まとめ
親子で染織作家をされている志村ふくみさん、洋子さん。その作風のベースは紬織で共通していますが、植物の色=その時の旬を染めるイメージですが、同じ色を再現するのが本当に難しい技術がいる技法です。そして人間の手から生み出される美しいその色はその人にしか出せない独特な個性を持っています。親子でこの技法を極められて世に送り出している大変な作業だと感じました。
そして、とても時間のかかる根気のいる作業を紬織というの積み上げと思います。イメージの通りに色を出し、デザインにあった織を再現する。出来上がったものは宝物のように感じますね。自然を受け入れバランスよく配置できるセンスの良さもお二人ならでは、ファンも多いことだと思います。
そしてその教育にも力を入れている「アルスシムラ」の存在も染織技法を一般に開放されていて素敵な場所だと感じました。半日から2日など選べる教室は手軽に植物染料の美しさを体感できる場所として興味を持ちました。これらの素敵な作品を世に送り出して、見る人に紬織の存在を印象付けていかれることと思いました。実用的なのも染色作品の魅力の一つですね!今後の作品展も楽しみです。
美の壺 選「いのち宿る 草木染め」で放送予定です。
9月1日 日曜 23:00 -23:30 NHKEテレ1東京
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